血便や長引く下痢は、早めにご相談ください
Ulcerative Colitis
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、びらんや潰瘍が生じる炎症性腸疾患です。血便や粘液の混じった便、下痢、腹痛などが代表的な症状で、症状が強くなる「活動期」と、落ち着いた状態が続く「寛解期」を繰り返すことがあります。症状が落ち着いていても腸の粘膜に炎症が残っている場合があるため、薬の服用や定期的な検査を継続することが大切です。当院では、症状や経過を丁寧に伺い、血液検査や便検査、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)などを組み合わせて状態を確認します。潰瘍性大腸炎が疑われる場合や専門的な治療が必要な場合は、連携する医療機関と協力しながら継続的な診療につなげます。
潰瘍性大腸炎とは
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気
潰瘍性大腸炎は、大腸の最も内側にある粘膜に炎症が起こり、赤みやただれ、びらん、潰瘍などが生じる病気です。
多くの場合、炎症は直腸から始まり、大腸の奥に向かって連続的に広がります。炎症がある部分と正常な部分が飛び飛びに現れやすいクローン病とは、病変の広がり方が異なります。
病変が広がっている範囲によって、主に次の3つに分けられます。
① 直腸炎型
炎症が直腸に限られているタイプです。血便や便に粘液が付着する症状が中心で、便の回数がそれほど増えないこともあります。
② 左側大腸炎型
直腸から大腸の左側まで炎症が広がっているタイプです。血便や下痢、腹痛、頻繁な便意などが現れます。
③ 全大腸炎型
炎症が大腸全体に広がっているタイプです。下痢や血便の回数が多くなり、発熱、貧血、体重減少などの全身症状を伴う場合があります。
病状は、炎症の範囲だけでなく、便の回数、血便、発熱、貧血などによって、軽症・中等症・重症などに分けて評価します。
潰瘍性大腸炎は国の指定難病ですが、適切な治療を続けることで、症状の落ち着いた寛解状態を長く維持できる方も多くいます。
潰瘍性大腸炎の原因
免疫や遺伝的な体質、環境など複数の要因が関係します
潰瘍性大腸炎の詳しい原因は、現在も明らかになっていません。
遺伝的な体質や腸内細菌、食生活などの環境要因が複雑に関係し、免疫の働きに異常が起こることで、大腸の粘膜に炎症が生じると考えられています。
発症に関係すると考えられている主な要因は次のとおりです。
・遺伝的な体質
・免疫機能の異常
・腸内細菌叢の変化
・食生活などの環境要因
・感染性腸炎後の腸内環境の変化
ご家族に潰瘍性大腸炎やクローン病の方がいる場合は発症しやすい傾向がありますが、必ず遺伝する病気ではありません。
また、ストレスは潰瘍性大腸炎の直接的な原因とは言い切れませんが、症状が悪化するきっかけになる場合があります。患者様の生活習慣が悪かったために発症する病気ではないため、ご自身を責めず、適切な治療を続けることが大切です。
潰瘍性大腸炎の症状
血便や下痢、頻繁な便意などが現れます
症状は、炎症の広がりや強さによって異なります。
主な症状は次のとおりです。
・血液が混じった便
・粘液や膿のようなものが混じった便
・下痢
・腹痛
・急な便意
・排便しても便が残っている感じ
・何度もトイレに行きたくなる
・夜間の下痢
・発熱
・食欲不振
・体重減少
・貧血
・倦怠感
直腸の炎症が強い場合は、便がほとんど出ないのに、血液や粘液だけが出ることもあります。
潰瘍性大腸炎では腸の症状だけでなく、関節の痛み、皮膚症状、目の炎症、肝臓や胆道の異常などが現れることもあります。
速やかな受診が必要な症状
次のような症状がある場合は、炎症が強くなっている可能性があります。
・血便や下痢の回数が急に増えた
・大量の血便が出る
・強い腹痛が続く
・高熱がある
・お腹が強く張る
・水分や食事を取れない
・動悸や息切れ、強いふらつきがある
・急激に体重が減った
・意識がぼんやりする
強い腹痛や腹部の張り、高熱、大量の血便などがある場合は、中毒性巨大結腸症や大量出血などの合併症も考えられます。通常の外来受診を待たず、救急受診が必要になることがあります。
潰瘍性大腸炎の検査・診断
内視鏡や組織検査などを組み合わせて診断します
潰瘍性大腸炎は、一つの検査結果だけで診断するものではありません。症状や経過を確認したうえで、血液検査、便検査、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)、病理検査などの結果を組み合わせ、感染性腸炎やクローン病など、ほかの病気との違いを確認します。
血液検査
炎症の程度、貧血、栄養状態、肝機能などを確認します。
便検査
細菌やウイルスなどによる感染性腸炎との区別や、腸管の炎症の程度を確認するために行います。
便中カルプロテクチンなどを用いて、腸粘膜の炎症の程度を調べることもあります。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸の粘膜を直接観察し、炎症の範囲や強さを確認します。
主に次のような所見がないかを調べます。
1. 粘膜の赤みやむくみ
2. 粘膜の血管が見えにくくなっているか
3. 出血しやすくなっているか
4. びらんや潰瘍の有無
5. 炎症が直腸から連続して広がっているか
6. ポリープ状の変化や狭窄がないか
必要に応じて大腸の複数箇所から組織を採取し、顕微鏡で炎症の特徴を調べます。
炎症が強い急性期には、通常どおりの下剤や全大腸の観察が身体への負担になることがあります。そのため、患者様の状態に応じて前処置や観察範囲、検査の時期を慎重に判断します。
大腸カメラは診断だけでなく、治療効果の確認や、長期経過中の大腸がんの早期発見を目的とした定期検査にも用いられます。
潰瘍性大腸炎の治療
炎症を抑え、寛解状態を長く維持することを目指します
潰瘍性大腸炎の治療では、活動期の炎症を抑えて症状を落ち着かせる「寛解導入」と、落ち着いた状態を長く保つ「寛解維持」を目指します。
症状が改善しても腸の炎症が残っていたり、薬を中断することで再燃したりする場合があります。自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。
5-アミノサリチル酸製剤
軽症から中等症の潰瘍性大腸炎で広く使用される、腸の炎症を抑える薬です。内服薬のほか、炎症が直腸に近い場合には坐薬や注腸薬を使用することがあります。
ステロイド薬
炎症が強い活動期に使用し、症状を速やかに抑えることを目指します。長期間の使用では副作用が問題となるため、寛解維持を目的として使い続ける薬ではありません。
免疫調節薬・分子標的薬
5-アミノサリチル酸製剤やステロイド薬で十分な効果が得られない場合や、再燃を繰り返す場合には、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬などを検討します。
薬ごとに効果や副作用が異なるため、病状や持病、生活状況などを踏まえて治療方法を選択します。
血球成分除去療法
血液中から炎症に関わる白血球などを除去する治療が検討される場合があります。
外科治療
薬物療法で炎症を抑えられない場合や、大量出血、中毒性巨大結腸症、穿孔、大腸がんなどの合併症がある場合には、手術が必要になることがあります。
食事と日常生活
潰瘍性大腸炎の患者様全員が、常に厳しい食事制限を行う必要はありません。
活動期には、脂肪分や刺激の強い食品、アルコールなどによって症状が悪化する場合があります。寛解期には栄養バランスのよい食事を基本とし、ご自身で症状が出やすい食品を確認しながら調整します。
睡眠不足や過労を避け、薬を継続して服用することも再燃予防のために重要です。
定期的な経過観察
症状が落ち着いていても、血液検査や便検査、必要に応じた大腸カメラで炎症の状態を確認します。
長期間にわたり広い範囲に炎症が続いている方は、大腸がんのリスクが高くなることが知られています。そのため、罹患期間や炎症の範囲に応じて、定期的な下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることが大切です。